リュディエ通信 Vol.70

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YAカレント同好会 リュディエ通信 Vol.70
2024/9/25発行
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こんにちは。YAカレント同好会です。

YAカレント同好会が運営するメールマガジン「リュディエ通信」。

毎月25日に、鮮度の高い“ヤングアダルト”の情報を
YAカレント同好会会員の皆様にお届けしています。

秋とはいうものの、東京では真夏日が
ようやく落ち着いたという印象です。

子どもたちの読書感想文や自由研究の時期も過ぎ
図書館でもようやく一息ついたところかなと思いますが
急な気温の変化とともに、「読書の秋」の始まりも感じます。

・・・・・・・・・・・・・・目次・・・・・・・・・・・・・・
[1] ライトノベルAtoZ 第34回「ライトノベルのライト性ってどこにあるの?」
[2] 名作ライトノベル紹介
[3] 読者アンケート ※抽選で3名様にDBジャパンの索引をプレゼント!
[4] DBジャパン新刊information
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[1] ライトノベルAtoZ 第34回「ライトノベルのライト性ってどこにあるの?」

ライトノベルは「ライト」な小説である、と考えられています。
ここで言うライトは光(light)でもなければ右(right)や
正しい(right)でもなく、書く(write)でもありません。
軽い(light)の意味合いでライトという言葉が使われています。
軽く読める、の意味であるわけですね。

ここには、小説は同種のエンタメ――
漫画、アニメ、ゲーム、ドラマ――と比べても、
「重い」ものだ、という考え方が背景としてあるように思われます。
というのも、映像や絵は見るだけで物語の世界が
自分の頭に入ってきて、「今どうなっているのか」
「どんな状況なのか」が考えずともわかります。

しかし、小説は言葉(文字、文章)だけで
物語が描かれているわけですから、どうしても言葉を自分で追いかけ、
自分なりに頭の中で物語を描かなければいけません。
これを「重い」作業だと考え、敬遠してしまう人が
ある程度いるのは、仕方のないことでしょう。

なお、文字でだけ物語が描かれていることは
必ずしも悪いことだとは言えません。
元落語家で今はラジオパーソナリティーなどとして
活躍する伊集院光氏は、「落語やラジオのように言葉だけで表現すると、
あるキャラクターなどについて聞き手がそれぞれに自分の中で
オリジナルに考えてくれる。この自由さは映像メディアにはない」
といった意味のことをおっしゃっていました。
小説にも同じことが言えるはずです。

――とはいえ、「重い」人には「重い」のが小説を読むという作業。
その重さを「軽く」してくれているのが、
ライトノベルにしばしば組み込まれている各種の工夫なのです。

例えば、ライトノベルは会話文が多いと言われることが多いです。
状況をイメージするために考えなければいけないことの多い
地の文よりも、単にセリフだけの会話文の方が「軽い」といえます。

地の文で言いますと、複雑な比喩より簡易な表現の方が比較的多いです。
またキャラクターの仕草や動きなどで感情を表現する
いかにも小説的な技法だけでなく、怒った、喜んだ、悲しんだなど
ストレートな表現でわかりやすい文章が心がけられていることが
多いようで、これらもまた「軽さ」を作っています。

そして何よりも、表紙や挿絵などでイラストを用い、
ビジュアルの力で読者の想像力を補助することで
「軽さ」を演出しているのは、ライトノベルの
最大の特徴であると言っていいでしょう。

(執筆:榎本事務所 榎本海月様)

[2] 名作ライトノベル紹介

○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○
第34回 北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』
『ちょっと今から人生かえてくる』メディアワークス文庫
○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○o。.。o○

『ちょっと今から仕事やめてくる』の主人公は
ブラック企業で過酷な仕事と上司によるパワハラによって
心身ともに疲弊し尽くした青年、青山。

ある時、ついに耐えきれなくなって駅のホームで
自殺を図った時、彼を止めたのは「ヤマモト」を名乗る関西弁の男だった。
「青山の小学校時代の同級生」を名乗るヤマモトだったが、
青山には覚えがない。実に胡散臭いが、しかし青山の弱り切った
心身をよく理解した彼の言葉により、青山の人生は好転していく。
しかし、ヤマモトの正体はやはり不明で……。

続編の『ちょっと今から人生かえてくる』は、
青山が仕事を辞めた後のブラック企業を舞台にした物語。
彼の上司がパワハラをしていたことの背景と、その後どうなったかを描く。
こちらでもヤマモトが活躍して、彼に関わった人々の人生が変わっていく。

本作は映画化もされた、ライト文芸を代表する作品の一つです。
ライト文芸と一口に言ってもそのあり方はさまざまなのですが、
2015年に刊行された本作は、より一般文芸に
近い作品であるといえます。

ここで描かれているのは非現実的な冒険ではなく、
現実の私たちが悩まされている問題に非常に近いものをいかに受け入れ、
いかに乗り越えるかという物語に他なりません。
そこにちょっとだけ現実離れしたニュアンスを加え、
エンタメらしさを醸し出しているのが
著者の腕の見せ所と言えましょう。

構造としてはある意味で青春もの(青春期にありがちな
悩みとその超克をドラマチックに描く)と同じなのですが、
それが若いサラリーマンの物語に変わっているというのが、
「大人向けライトノベル」であるライト文芸らしいところです。

またこのような作品が受け入れられヒットしたというところからも
2010年代の時代性が見えてくるとも言えるでしょう。

(執筆:榎本事務所 榎本海月様)

[3] 読者アンケート

アンケートにご協力いただきました方の中から、
抽選で3名様にDBジャパンの既刊索引を1冊プレゼント!
※当選された方には、メールでご連絡いたしますので、
その際に送り先のご住所をお知らせください。

Q1 “ヤングアダルト”層にオススメ(もしくは実際に読まれている)の
書籍を教えてください。

Q2 ヤングアダルト向けの選書で参考にされている
情報媒体等を教えてください。

Q3 利用者向けの展示やイベントや工夫されていることを教えてください。

Q4 ご自身のお仕事や、それ以外のことでも
学び直ししたいことがあれば教えてください。

以下、応募フォームよりご応募ください。

▼▼▼
https://ya-current.com/magazine70inquery/

※10月18日(金)までを締め切りとさせていただきます。

[4] DBジャパン新刊information

~新刊案内~
『子ども向け地域資料作成の手引き』
A5・72頁 定価1,540円(本体1,400円+税10%)
ISBN: 978-4-86140-527-3
2024年8月刊行

長年、三多摩地域資料研究会や日本図書館協会の資料保存委員会等で活動し、
小平市中央図書館長を務めた蛭田廣一氏。「地域資料サービス」の
向上に尽力している同氏が、子どもの興味を引き出し、
学習する「楽しさ」を引き出す「子ども向け地域資料」を
作成する際の基礎知識と手順を紹介。児童担当や地域資料担当で、
子ども向け地域資料を作成する必要を感じている人にぴったりの、
準備のステップや心構え、アイディアを助ける参考資料など、
基礎から学べる一冊です。

その他書籍情報はコチラから▼▼▼
https://www.db-japan.co.jp/books/

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YAカレント同好会のDBジャパン

DBジャパンが提唱するYAカレントとは、
その時期に、中学生・高校生によく読まれている
ポピュラーなYA書籍群を指します。

YAカレント同好会のウェブサイトへようこそ!

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最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
「リュディエ通信」次回は2024年10月25日(金)に配信予定です。

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発行元:YAカレント同好会(株式会社DBジャパン)
「リュディエ通信」編集部

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