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YAカレント同好会 リュディエ通信 Vol.56
2023/7/25発行
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こんにちは。YAカレント同好会です。
YAカレント同好会が運営するメールマガジン「リュディエ通信」。
毎月25日に、鮮度の高い“ヤングアダルト”の情報を
YAカレント同好会会員の皆様にお届けしています!
第169回の芥川賞と直木賞が発表されましたね。
芥川賞を受賞した『ハンチバック』の著者・市川沙央さんは、
ご自身も重度の障害をお持ちで、
「読書バリアフリー」を訴えられています。
そして、まさに読書のバリアフリーにつながる
「視覚障害者サービス」の考え方をテーマにし、
図書館業務に役立つ“考え方”をストーリーから学べる
「教えて!先生」シリーズの第2弾が本日発売です!
もしよろしければお手に取ってみてください。
※[6]の新刊案内もぜひご覧ください。
・・・・・・・・・・・・・・目次・・・・・・・・・・・・・・
[1] ライトノベルAtoZ 第27回「転生もの」
[2] 名作ライトノベル紹介
[3] コラム「ぬくぬく学校図書館生活」第9回
[4] 読者アンケート ※抽選で3名様にDBジャパンの索引をプレゼント!
[5] 司書トレ新着information
[6] DBジャパン新刊information
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[1] ライトノベルAtoZ 第27回「転生もの」
本連載ではいくつか、いわゆる「なろう系」から流行して
他ジャンルにも波及した物語パターンを紹介してきました。
今回紹介するのは、それら「なろう系」を源流とするパターンの中でも
出世頭、親玉格と呼んでいいであろうパターン……「転生もの」です。
近年はまたちょっと事情が違うのですが、少なくともある時期、
ウェブ小説由来の物語といえば転生ものばかり、という頃は確かにありました。
では、そもそも「転生もの」とは何でしょうか?
これはある世界(多くの場合は現実の地球)に生きていた主人公が、
何かしらの事件(トラックに轢かれるというのが定番でした)によって死に、
異世界に生まれ変わるところから始まる物語です。
この時、多くの主人公は何らかの特殊能力
(生まれ変わった時に得た特別な能力や、現代人として
備えている、異世界では異質の価値観や知識など)を持っており、
それによって大活躍していきます。
とはいえ、このような物語の形は近年突然生まれたわけではありません。
古くはファンタジーの源流的作品である『ナルニア国物語』において
主人公たちはタンスを通って異世界へ旅立ちましたし、
『アーサー王宮廷のコネチカット・ヤンキー』で主人公が訪れる場所も
ほぼファンタジー世界のようなものです。
アニメですが『聖戦士ダンバイン』は
「主人公がバイクに乗っていたら交通事故に遭って異世界へ飛ばされる。
特別な能力を目覚めさせた主人公は異世界での戦争に関わっていく」という、
「なろう系」における転生ものにかなり近い構造を持っています。
ただ、これら先行作品は「転生」よりも「転移」、
すなわち自分自身で移動するケースがほとんどでした。
対して「なろう系」でブームになった諸作品は、その多くで主人公が元の体を失い、
生まれ変わって異世界に現れます(転移の作品も少なからずありましたが)。
理由についてはいろいろと考えられ、一つには絞れません。
「元の世界に帰ることを目標にしてしまうとストーリー展開が縛られ、
話が短く終わってしまう」「現代人の常識と異世界人としての
生活の両方を無理なく兼ね備えることができる」
「現代のおじさんにして異世界の若者、という
読者が共感しかつ憧れられるキャラクター性を作ることができる」
などを一例として提示しておきます。
こうして、「なろう系」といえば(ライトノベルといえば)、
ファンタジー異世界を舞台にした転生もの、
と語られるようになっていくわけです。
(執筆:榎本事務所 榎本海月様)
[2] 名作ライトノベル紹介
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第27回 高橋弥七郎『灼眼のシャナ』(電撃文庫)
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この世とは違う異世界、 “紅世(ぐぜ)”。
そこからやってくる怪物めいた存在、
“紅世の徒(ぐぜのともがら)”は人間を食う。
ただ肉として食うのではなく、その“存在の力”を奪い、
そもそも最初からなかったようにしてしまうのだ。
高校生・坂井悠二もまた、“紅世の徒”に食われ、
本人の自覚がないまますでに死者となっていた。
今はただ、生きているように見せかけられた状態にされているに過ぎない。
彼にその真実を知らせたのは、“紅世の徒“の中でも
特に強力な“王”と契約して超常の力を得て、
“紅世の徒“と戦うフレイムヘイズの少女だった。
名を持たない彼女に「シャナ」と名付けた悠二は、
次々と現れる“紅世の徒“たちと戦い、
また他のフレイムヘイズとも遭遇する中で、
大きな運命のうねりへと巻き込まれていくことになる……。
2000年代のライトノベルを代表するヒット作の一つである本シリーズは、
独自用語が多用され、バチバチにハッタリを効かせた、
壮大なスケール感のバトルものです。
しかし同時に、複雑な状況に追い込まれた悠二と、
ほとんど戦闘機械のようだった序盤から人間性を獲得していくシャナ、
そして悠二に想いを寄せるクラスメートの吉田一美が織りなす
甘酸っぱい三角関係を楽しむ青春ものでもあります。
もちろん長いシリーズの中ではこの三人以外にも
さまざまなキャラクターが登場し、
それぞれの思惑で物語の中を動き回るため、
非常に盛り沢山な展開を味わうことができるのです。
巨大なフルーツパフェを連想させるような
物語全体のボリュームと多彩さは、
この時代のライトノベルを象徴するあり方の一つです。
2000年代のライトノベルについて知りたい人は、
是非、本シリーズに挑戦してほしいですね。
(執筆:榎本事務所 榎本海月様)
[3] コラム「ぬくぬく学校図書館生活」第9回
こんにちは。都内の学校図書館で働いている司書です。
本コラムでは、私が勤めている学校図書館での
日常の出来事を綴っています。
先日、昨年度の卒業生が「里帰り訪問」という
イベントのため久しぶりに来校。
自分が入学した高校の紹介を中学3年生に発表してくれました。
イベントを無事終え、図書委員だった元男子生徒が、
図書館にも立ち寄ってくれました。
不思議と、何ヶ月ぶりという気はしなかったものの、
少し伸びた背と低くなった声に時の流れを感じます。
後輩たちは、言葉や表情にはあまり出さないけれど、
とっても嬉しそうで、最近読んだ本やマンガ、
アニメの話に花を咲かせていました。
会話の中で、通っている高校の図書館の話に。
「ラノベも置いてあるんだよ! その本を借りている子がいたから
声をかけてみたら、他の趣味もめちゃくちゃ合ってさー!」とのこと。
中学生の頃は、あまり自分から話しかける
タイプではなかったのに、著しい成長。
高校でも、図書館という場所で、本を通じて、出会い、
しっかり繋がっていっている話を聞けて
本を介して人と近づくことができた経験を、
自分もあらためて思い返してみよう、と思った夏の放課後でした。
[4] 読者アンケート
アンケートにご協力いただきました方の中から、
抽選で3名様にDBジャパンの既刊索引を1冊プレゼント!
※当選された方には、メールでご連絡いたしますので、
その際に送り先のご住所をお知らせください。
Q1 “ヤングアダルト”層にオススメ(もしくは実際に読まれている)の
書籍を教えてください。
Q2 選書の際に参考にしているメディア(情報サイト、情報誌、書籍)
などがあれば教えてください。
Q3 反響が高かった利用者向けの図書館イベントがあれば教えてください。
Q4 ご自身のお仕事や、それ以外のことでも「学び直し」したいこと
あれば教えてください。
以下、応募フォームよりご応募ください。
▼▼▼
https://ya-current.com/magazine55inquery/
※8月18日(金)までを締め切りとさせていただきます。
[5] 司書トレ新着information
「点字図書館基本」(全館種共通)を新たに追加しました!
★「点字図書館基本」内容紹介
あまり知られていない点字図書館の業務の概要と特徴を、
具体例を示しながら説明する。また、今の社会での
点字図書館の立ち位置、関わりを確認する。
[6] DBジャパン新刊information
~新刊案内~
『平井先生。図書館では視覚障害がある方に向けてどんな支援ができるの?
~ストーリーでわかる視覚障害者サービスの考え方~』
A5・160頁 定価1,980円(本体1,800円+税10%)
ISBN: 978-4-86140-332-3
2023年7月刊行
図書館業務に役立つ考え方が物語で学べる「教えて!先生」シリーズの第二弾!
図書館司書が「平井先生」から、視覚障害者支援サービスの
基本的な”考え方”を学ぶ本書。視覚障害の症状や原因が多様に
あることへの理解、利用者それぞれに応じた視覚障害者サービスのあり方、
見えない・見えにくい方のための読書形態や読書環境についてなど、
視覚障害者支援の知識が身につく一冊です!
その他書籍情報はコチラから▼▼▼
https://www.db-japan.co.jp/books/
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YAカレント同好会のDBジャパン
DBジャパンが提唱するYAカレントとは、
その時期に、中学生・高校生によく読まれている
ポピュラーなYA書籍群を指します。
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最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
「リュディエ通信」次回は2023年8月25日(金)に配信予定です。
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その他ご要望に関しては以下のお問い合わせフォームより
ご連絡ください。
発行元:YAカレント同好会(株式会社DBジャパン)
「リュディエ通信」編集部
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