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YAカレント同好会 リュディエ通信 Vol.80
2025/7/25発行
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こんにちは。YAカレント同好会です。
YAカレント同好会が運営するメールマガジン「リュディエ通信」。
毎月25日に、乳幼児・小学生・中高生に関する
鮮度の高い情報をYAカレント同好会会員の
皆様にお届けしています!
・・・・・・・・・・・・・・目次・・・・・・・・・・・・・・
[1] ライトノベルAtoZ 第39回「ライトノベルと【リアル】」
[2] 名作ライトノベル紹介
[3] 編集部だより
[4] DBジャパン新刊information
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[1] ライトノベルAtoZ 第39回「ライトノベルと【リアル】」
ライトノベルの多くは娯楽性を重視しています。
そのため、しばしば【リアル】でない、という
(どちらかといえば否定的な)評価を受けることがあります。
これは「現実に考えればそんなことが起きるはずがない」
「現実ではこうなるはずだ」という指摘を意味しています。
そもそもライトノベルは小説、つまりフィクション(作り話)なので
リアルそのものではないのですが、かといって全くリアルと食い違った
作品もあまりありません。そんな作品は内容の理解が困難で、
非常に読みにくくなるからです。そこでリアルをベースにしつつ
適宜フィクション――架空の人物を登場させたり、
魔法のある世界として設定したり――を入れ込んでいくわけです。
このことは多くの読者も理解しているはずなのですが、
それでも時折「【リアル】でない」と批判する人が出てきます。
特にライトノベルで目立つのは「この時代(地域)にこんな道具や
作物があるのはおかしい」などの指摘です。
一時期、ジャガイモ(大航海時代にアメリカ大陸から
ヨーロッパへ持ち込まれたため、中世ヨーロッパには存在しない)
が標的となり、「ジャガイモ警察」などというミームも生まれました。
ライトノベルでこの種の細かいリアルにこだわるのは
あまり意味のあることだとは思いません。
「あくまでフィクションなので、中世ヨーロッパ的世界に
ジャガイモがあってもさほど問題はない」ですし、
「より大事なのはストーリーが面白いこと」だからです。
むしろ、「その世界の技術・文明のレベルからするとちょっと
おかしくても、読者に身近なものを登場させた方が作品としての魅力が増す」
ケースさえあります。一例として、深沢美潮『フォーチュン・クエスト』
シリーズ(電撃文庫)では、主人公たちが野外で食事をするシーンで、
ホットケーキミックスやアルミホイルが登場します。
ファンタジー世界にはちょっとそぐわない品物ですが、
読者としては「自分と年齢や立場が近いキャラクターたちが
自分達にも馴染み深いものを扱っている」ということで共感が強まるのです。
もちろん、リアルであることに全く意味がないわけではありません。
リアルであれば読んでいて違和感を持つことが減り、
物語に説得力が増します。また、作者が「中世ヨーロッパ的な世界に
ジャガイモが持ち込まれた場合、人口が一気に増えるはずだ。
そうなると、社会のあり方がこういうふうに変わるはずで……」
と思考を巡らせることで、独自の魅力を発揮する作品も珍しくありません。
(執筆:榎本事務所 榎本海月様)
[2] 名作ライトノベル紹介
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第38回 安里アサト『86』
(電撃文庫)
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サンマグノリア共和国が誇る兵器「ジャガーノート」は、
侵略側であるギアーデ帝国の「レギオン」と同じく無人兵器であり、
戦場で破壊されることはあっても人命を損なうことのない
理想的な兵器であると宣伝されていた。
しかし、事実は全く異なる。
ジャガーノートにはパイロットが乗せられている。
彼らは白系種が多数を占める共和国において人権を剥奪された有色人種であり、
つまり「人間ではないから人間を乗せていることにならない」という
理屈のもと、無人兵器扱いされているだけであったのだ。
彼ら有色人種は共和国85行政区の外へ追いやられ、
エイティシックス(86)と呼ばれていた。
物語は共和国の在り方に疑問を抱く白系種の士官
ヴラディレーナ・ミリーゼ(レーナ)と、特殊な能力ゆえに
「死神」の異名を持つエイティシックスのジャガーノート乗り
シンエイ・ノウゼン(シン)の邂逅から始まり、
やがて共和国の闇やレギオンの真実が明らかになる壮大な展開を見せる――。
いわゆる「巨大ロボット」ものは漫画やアニメでは昔から非常に
人気があるものの、ライトノベルでは(一部ヒット作はありつつ)
あまり見られません。理由としては、ビジュアル的な迫力を表現しにくい
ことなどがよく挙げられます。
そんな中、本作は(主役兵器はロボットというより多脚戦車の類ですが)
2010年代に久し振りに登場したロボットもの的ヒット作として注目され、
2021年にはアニメ化もされました。
本作の特徴としては、バトル・アクションシーンでしっかり迫力を
出していることはもちろん、非常に過酷な世界で生き抜く
少年少女たちの有り様を丁寧に描いていることを挙げたいところです。
共和国で行われている人種差別は苛烈であり、そのことが
差別される側は当然として差別する側にも大きな傷を残しています。
この状況は、物語が進んで情勢が大きく変わっても
(その中身はネタバレなるのでここでは避けます)変わることなく、
むしろどんどんグロテスクな姿を見せていくのです。
レーナとシン、そして仲間たちもその重荷から逃れることは
難しいのですが、それでも戦い続け、また心を通わせる
彼らの活躍をぜひ目にしていただきたいと願っています。
(執筆:榎本事務所 榎本海月様)
[3] 編集部だより
娘の通う保育園では、年長児になると、就学に向けて
定期的に近隣の小学校にお邪魔させていただく機会があります。
先日、初めて小学校に行き、図書室で読み聞かせをしていただいたそうです。
子どもたちはたくさんの本に目を輝かせていたようですが、
園で日ごろから読んでいる『パンどろぼう』に人気が集中したようでした。
日ごろから絵本に親しむことで、図書室や図書館が
自然と楽しい場所になっているようです。
[4] DBジャパン新刊information
~新刊案内~
『世界の物語・お話絵本 登場人物索引2016-2019』
A5・260頁 定価11,000円(本体10,000円+税10%)
ISBN:978-4-86140-612-6
2025年6月刊行
ある特定の人物や動物が登場する絵本を知りたい。
絵本のタイトルは忘れたが、フォックスさんという
キツネが登場する絵本が知りたい。
フレデリックというネズミが登場する絵本はあるか。
そんな絵本愛読者の要求に答える、
登場人物から引ける物語・お話絵本の登場人物索引!
2016~2019年に刊行された絵本902作品の登場人物から引ける索引
その他書籍情報はコチラから▼▼▼
https://www.db-japan.co.jp/books/
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YAカレント同好会のDBジャパン
DBジャパンが提唱するYAカレントとは、
その時期に、中学生・高校生によく読まれている
ポピュラーなYA書籍群を指します。
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最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
「リュディエ通信」次回は2025年8月25日(月)に配信予定です。
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発行元:YAカレント同好会(株式会社DBジャパン)
「リュディエ通信」編集部
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